Notes

・主専攻　芸術
主題 Smell of Arts：芸術作品における嗅覚的表現のケーススタディ
副題 問題提起を通じて（博論か研究業績）

・古代の人類のにおいの捉え方
『古代ローマの哲学者であるルクレチウスが、「匂いというものは、原子のつながった分子でできていて、分子の形や大きさの違いが、匂いの質の違いを生む」と記述している。現在の匂い物質に関する知見を如実に表した的確な表現である。その科学的根拠は、前述の嗅覚受容体の発見によって明らかになったが、一方で、「形」だけでは説明がつかない匂いの不思議を説明できるのが、分子振動説というものであるとルカ・テューリンは主張する。分子振動説というものがどのような説なのかは、本書と、彼のサイエンス界での活動のドキュメンタリーともいえる既刊書「匂いの帝王」(早川書房)で詳細に記載されているのでここでは説明しないが、量子化学あるいは量子物理学の観点から見れば、確かに説得力のある部分もある。しかし、一方で、そのためには鼻のなかが「分光器」になっていなくてはいけないという主張にはやや無理がある。ただ、視覚と聴覚と並んで、匂いの嗅覚を「分子振動」という物理信号として共通概念にとらえているところは、まさに、ボードレールが「万物照応」で色、光、音、匂いのアナロジーを詠っているのと同じ考え方でもあり、科学的には無理があっても、人間の心を振るわせる哲学的そして美的な力を感じる。』
東原和成 ┃「香りの愉しみ、匂いの秘密」┃ルカ・トウーリン著、山下篤子訳（河出書房新社、2008年）

・コンディヤックについて
『感覚主義の典型を構築したコンディヤックは、嗅覚の考察を通じて、感覚から精神
－（47）－のあらゆる機能を導き出すことが可能であると主張した。つまり、認識における感覚の役割の重
要性を認めることと、感覚の一部である嗅覚を考察することとがコンディヤックにおいて結びつけられるのである。
2．嗅覚を持つ彫像―コンディヤック
エティエンヌ・ボノー・ド・コンディヤックは、著書『感覚論』（1754年）12において、「われわれと同じように内部が組織され、その精神にはいかなる種類の観念も持たない」13大理石の彫像（statue）を仮定した。そして、彼はそれに一つずつ感覚を与え、彫像の内部で起こる変化を考察した。この思考実験を通して彼が目指したのは、人間のあらゆる精神能力が感覚に帰せられると論証することであった。彼は知識の獲得に最も不適当と思われる「嗅覚」を彫像に与えることから出発する14。
我々は嗅覚から始めるのがよいと考えた。あらゆる感官（sens）のなかで嗅覚は人間の精神
の認識に寄与することが最も少ないと思われるからである。15』
12 コンディヤックの『感覚論』は Étienne Bonnot de Condillac, “Traité des sensations”, dans Œuvres philosophiques
de Condillac, vol. I, Paris: Presses Universitaires de France（以下、P.U.F. と略す）, 1947を参照した。邦訳は
コンディヤック『感覚論』上巻、加藤修一・三宅徳嘉訳、創元社、1949年を参照し、訳語、仮名遣い
等に変更を加えた。
13 ibid., p.222. 同書、67頁。
14 彫像は外部の対象を判断する際に活躍しないと考えられるものから嗅覚、聴覚、味覚、視覚の順に
感覚を付与される。触覚は唯一、外在性の観念を獲得し得るため、他の感覚とは分けられた。デカル
トが触覚の確実性を重視し、『哲学原理』において真っ先にこの感覚を論じたのに対し、コンディヤッ
クは触覚を最後に論じた。
15 Condillac, ibid. 同箇所
匂いの哲学の転換
横 山 奈 那２０１８

・１８世紀フランスの香水産業と皮なめし業の関係性
『グラースの革なめし産業
元々グラースは12世紀以来、革なめし産業で名を馳せました。グラースで生産される革は品質こそよかったが、なめし革から発せられる臭いがひどく、フランスの貴族に好まれなかったそうです。
それにより生まれたのが手袋に香りをつけるという事。当初なめし革特有の臭いを消す必要に迫られて製造されましたが、やがてお洒落な小道具として使用されるようになりました。
一時期は香水産業の中心だったイタリアは16世紀末にはフランスにとって代わられ、モンペリエが新しい香水の都に発展していったそうです。
手袋・香料産業同業組合
バロック時代香り付き手袋製造業者の組合は地位があがり、1614年には手袋、香料産業同業組合と名乗る権利を得たグラースの町は大きく発展しました。18世紀には革なめしが廃れていく一方で、香料・香水に特化した生産が行われるようになり、
モンペリエの街は薬剤師が香りつき水薬を製造していたのとは対照的に、グラースの香料業界は高級品産業へ発展していきます。
グラースは絶景のロケーションと温暖な気候に恵まれ、ラベンダーやローズなど多くの種類の花々が栽培されていた南仏の町は、香水産業の中心地に取って代わりました。』
https://isilk.jp/%E3%83%96%E3%83%AD%E3%82%B0/4753/


・２０世紀？絵画（油彩）におけるにおい消しの心理
・ターナー、コロー、バルビゾン派
・絵画における存在とにおい
・イ・ブル、ダミアン・ハースト、ヨーゼフ・ボイス、ハラルド・ゼーマンについて

主題 空間における油彩のにおいの感じ方