Notes

意見書

令和６年２月１６日

　原処分庁意見書によれば、「事業主は事前申告を受けておらず、休日出勤するよう指示、命令した事実も認められない。また、請求人以外の事務職員は休日出勤することはなく、発症当日請求人が行っていた業務に緊急性は認められない」との記載がされているところ、請求人は、労働保険審査請求書に記載のとおり、事業主に対し事前申告を行っており、当該申告に対する事業主の回答のみが一切行われていない。
　しかし、最高裁判決（平１２．３．９）は、労働基準法３２条の｢労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんにより決定されるべきものではない｣とし、東京地裁（平３０．３．２８・労経速２３５７号１４頁）は、時間外労働が常態化していたことからすると、代表者がこれを承認したか否かにかかわらず、少なくとも会社の黙示の指示に基づき就業し、その指揮命令下に置かれていたと認めるのが相当であり、割増賃金支払の対象となる労働時間に当たるとしている。
　事業主から請求人に対し、休日出勤に関する指示または承認の回答が一切行われないまま請求人の休日勤務が実施され、それら勤務に対する休日割増賃金が支給される状態が常態化していたことは、令和４年１１月から令和５年５月までの給与明細によって明らかである。即ち、事業主から請求人に対する休日勤務の指示または命令がなくとも、事業主は請求人の休日勤務の常態化を認識しており、黙示の状態で承認したことは明らかであり、これら事業主の行為は、黙示の承認または黙示の支持に該当すると見做されるべきである。
　なお、業務遂行性の観点からすると、請求人が熱中症を発症した令和５年６月２５日は、請求人の担当する弁護士が長期入院中であったため、担当弁護士宛の緊急性を有する郵便物や書類等の有無を確認する必要があった。しかし、請求人は、令和４年より事務所所属弁護士によるセクシュアル・ハラスメント、令和５年より事業主によるパワー・ハラスメントを受けて体調及び精神不調を起こしており、両者が在勤する平日の出勤に強い困難を伴ったために両者不在の休日に出勤せざるを得ず、事業主に対し休日出勤の事前申請を行ったものである。また、発症日である６月２５日、請求人は郵便物の結果を担当弁護士へ報告している点を鑑みても、業務遂行性は認められる。


、明示がなくとも黙示の指示があれば、｢使用者の指揮命令下に置かれている時間｣（労働時間）と評価でき

クロスインデックス事件（東京地裁平成３０年３月２８日・労経速２３５７号１４頁）