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過ごしやすい季節になってきた。食べ物が傷みにくくていい季節だ。そんなことを思いながら、鼻歌を歌いつつ真っ黒な鍋の中身を攫っていく。いつもの大きなタッパーへ、一丁まるごと煮込んで味を染みこませておいた豆腐を一番先に詰め、それを埋めるようにしてトロトロになるまで煮込んだ牛すじをみっしりと詰め込んだ。(※1)
鍋の中身があらかた片付いたら、目減りした鍋の出汁へ砂糖を一掴み、それから醤油と料理酒を入れて味を調え、買い置きしてあった豆腐と冷凍の牛すじ肉をまだ暖かい鍋の中へ入れれば、次回の分の下準備もOK。小さめのタッパーには初物の柿を、大きな水筒にはいつもの番茶を入れれば、今日の準備は完了だ。(※2)
「いってきまーす!」
皆仕事でいないのは判っているが、染みついた習慣で実家の玄関を潜る。行き先は勿論、いつもの公園だ。今日もみんなが私を待ってる。そう考えるだけで、抱えた荷物の重さなんて感じなくなるほどに足取りが軽くなるのだった。


「こんにちはぁ~!」
人っ子一人いない寂れた公園に到着し、入り口で大きな声で挨拶をする。頭がおかしくなったわけではない。だって、ここは彼らのお家なのだからマナーは守らないと!
「こんにち……あっ♡」
「ゲッ」
二度目の挨拶をしようとした瞬間、視界の端が待ち望んでいた紫色を捕らえた。草むらからひょこりと顔を出したのは、この公園の住人であるゲルゲちゃんだ。
ゲルゲちゃんは私の姿を認めると、まるでついておいでとでも言うように踵を返し(※3)、草むらの中に潜り込んでいった。お言葉に甘え、私もそそくさと草むらに向かう。いい歳した人間が真っ昼間から一人で公園にいるのはやはり若干体裁が良くないため、ゲルゲちゃん達の気遣いは非常にありがたい。
「ミ゙ンナァァァァ!! ニ゙ンゲン! ニ゙ンゲンサンギダァァァ!!!」
「うふふ~、ゲルゲちゃん待ってよぉ~♡」
「ゲッ!? ニ゙ンゲン!?」
「ニ゙ンゲンサンダァァ!!」
案内役のゲルゲちゃんについて歩けば、ほどなくして草むらの中の桃源郷…ゲルゲちゃんたちの巣に案内される。大小数匹のゲルゲちゃんたちをぐるりと見渡してから、私は先ほどのようにもう一度大きな声で挨拶をする。
「ゲルゲちゃんたち、こんにちは!」
「ゲ、ゲゥ…」
「コ、コンニ゙ヂワァ…」
毎日の事なんだけど、ゲルゲちゃんたちはあまり元気が良くない。(※4)びくびくオドオドしているようにも見える…私がいない間に、虐民にいじめられたりして、人間が怖いのかもしれない。ああ、なんて可哀想なゲルゲちゃんたち…!
「みんな、元気出して! 今日のごはんさん持ってきたよ!!」
「ゴ、ゴハン…?」
「ゴハンサン…」
ごはんと聞いて、警戒色の強めだったゲルゲちゃんたちの表情にそわそわとした色が混ざり始めた。(※5)ゲルゲちゃんたちに笑顔を向けつつ、トートバッグの中から、先ほど詰めたばかりでまだ暖かなタッパーを取り出す。
「…ショリェ、ニャァニ?」
一匹のベビゲちゃんが、好奇心に勝てなかったように聞いてきた。
「すき煮だよっ」
「ピリュ…ベビチャシリャニャイネェ…?」
「お肉とね、お豆腐を甘めにじっくり煮込んだごはんさんだよ!」
「ピリュゥ! アマアマシャン!?」
「オニグ…?」
「ゲゥオナガヘッダァァ…」
ざわざわと色めき立ち、私とゲルゲちゃんとの間にあった距離が徐々に狭まってくる。心地よい期待感を一身に受けながら、私は恭しくタッパーの蓋を開いたのだった。
ふわりと立ち上る香りに、周囲を取り囲むようにしていたゲルゲちゃんが「ア゙ァー♡♡♡」と歓声を上げる。
「オニ゙グダァ!」
「オイジゾウ…タベダイ…」
「イイニヨイシュリュネェ!」
「ピリュ!」
「さ、召し上がれ♡」
「ゲ…イイノォ?」
「勿論だよ、どうぞ!」
ゲルゲちゃんたちが飲みやすそうな平皿に番茶を注ぎながら勧めてあげると、周囲にいたゲルゲちゃんたちがもるもるもる! と競うようにしてタッパーににじりよっていった。
「歯のないベビゲちゃんには白い塊さんがおすすめだよ、お肉の味が染みてるよぉ」
「ベビヂャコレシュキィィ!」
ぷりゅぷりゅ♡と尻尾を揺らしてご機嫌で食事をするゲルゲちゃん達を見ているだけで、胸の中が幸せでいっぱいになってくる…ああ、今日もごはんを作ってきて本当に良かった…!!
「味が濃いから、喉渇いたらお茶さんのんでね! デザートは柿さんだよぉ~」
「「「ア゙イ゙ッ♡」」」
声を揃えたご機嫌のお返事。笑顔がとってもまぶしい! こうして、お茶や出汁の最後の一滴を舐め尽くしてしまうまで、ゲルゲちゃん達の楽しいお食事タイムは続くのだった。(※6)


30分後には、おなかをぽんぽんに膨らませた満足げな表情のゲルゲちゃんたちが草むらのそこここに累々と転がっていた。少し離れた位置では、おなかがいっぱいになって眠くなったベビゲちゃんがむずがっているのか、ママゲちゃんが困惑しているというのどかな光景が広がっている。(※7)
「ゲェ~♡ ゴヂゾウザマデシダァ~♡」
「おそまつさまでした」
空になったタッパーや水筒を片付けていると、大きなススキを挟んだ向こう側にゲルゲちゃんが這っていくのが見えた。どこに行くのかな? 好奇心の赴くまま、そっとゲルゲちゃんの後を追った。
「ゲェ…ンッ、ンンンンンン!」
私が追っているのに気付かず、人目に付かないところに移動したゲルゲちゃんは尻尾をピンと上げてうんうんの体勢だ。しばらくプルプルとポーズをキープしていたが、30秒ほどでへにゃりと力を抜いてしまう…疲れちゃったのかな?
「ゲゥゥゥ…ウンウンシダイ゙ノニ゙デナイヨォォ~…」(※8)
めそめそと泣くゲルゲちゃん。わかるわかる、便秘ってつらいよねぇ。残念ながら今は薬持っていないし、やるとしたら刺激排泄かな? トートバックからティッシュを取り出し、ふんばっているゲルゲちゃんに声を掛ける。
「ゲルゲちゃん、うんうんでない? 大丈夫?」
「ゲ、ゲェェェ!? ニンゲンサンナンデイルノォ!?」
「おちりツンツンしてあげるよ♡ もしかしたらうんうん出るかもしれないよ♡」
「イ゙ヤ゙ァァァァ! アッヂイッデェ! ミ゙ナ゙イ゙デヨォォ!」
顔を真っ赤にして、ゲルゲちゃんはもるもる逃げて行ってしまった…恥ずかしがらせちゃったな、失敗失敗!


反省しながら先ほどの広場に戻り、幸せそうにお昼寝をするゲルゲちゃんを眺めてほっこりする。甲斐甲斐しく動いているのは、毛も生えていないようなベビゲちゃんの世話をしているママゲちゃんくらいだ。ご機嫌斜めでぐずぐず言っているベビゲちゃんに、ママゲちゃんは困り顔。
「…あれ? パパゲちゃんはどこ行ったの?」
「ゲェゲシングルマザーサン゙ナノ…パァパ、ニ゙ンゲンサン゙ニ゙ツレ゙デカレ゙チャッタノ…」
しょんぼりした可哀想なママゲちゃん…「連れて行った」って事は、やはり虐民はこの公園にも出没するらしい。なんてことだろう!
私も毎日かかさずここに来れるわけでもないため、ごはんがなければ幼子を抱えたママゲちゃんが狩りに行かざるをえなくなる。それはあまりにも大変だ…。
「ママゲちゃん、今度私が旦那さん紹介してあげるね!」
「ゲッ? デモォ…」
「いいからいいから、遠慮しないで!」
やっぱりベビゲちゃんにはパァパとマァマが揃ってなきゃね! オドオドとしたママゲちゃんを元気づけるように、私はママゲちゃんの背をわしわしと撫でてあげた。
…ああ、この柔らかい感覚…やっぱ最高………。
「ゲ…ニ゙ンゲンサン…?」
「はぁぁ…♡ ねぇ、ママゲちゃん、ね、ちょっとだけ…ね♡」
「ゲ、ゲェェェェ!!?」
ママゲちゃんをぎゅっと抱きしめて、柔らかな毛に思う存分顔を埋め、すんすんと心ゆくまで匂いを嗅いだ。ママゲちゃんはゲルゲちゃん特有の土と汗の混じった草原の匂いの中に、ミリュクのものだろうか、優しい匂いが混じっている…あぁ、癒やされる…!
「んああああ♡ さいっこぉぉおおお♡」
「ゲェェェン! ハナ゙シデ、ハナ゙ジデヨォォォ!!」
「ピリュゥゥ!? ミャミャァァァ!?」
「ピゲェェェン!」
あっいけない、ベビゲちゃんたち泣いちゃった! 慌ててママゲちゃんを降ろしてあげれば、ママゲちゃんはベビゲちゃん達を抱いてもるもると隅の方に急いで行ってしまった…泣き声を気にして離れるのって凄く人間っぽいよね。奥ゆかしいなぁゲルゲちゃんって!(※9)
「ん~…まだ足りないなぁ…」
ママゲちゃんを解放してしまったので、くんかくんかが足りない。そう思いながら振り返れば、ゲルゲちゃん達がもるもると必死に逃げていくところだった。あっ、鬼ごっこかな♡ 負けないぞぉ~♪
「うふふっ、捕まえちゃうぞぉー!」
「ヤベデェェェェ!!
「ゴナイデネ! ゴナイデネ!?」
「ヤダァァァァァタベラレリュゥゥゥゥ!!」
ゲルゲちゃんってば迫真の演技!(※10) 微笑ましい気持ちになりながら回り込み、敢えて先頭を逃げていたゲルゲちゃんを捕まえ、そっと抱き上げる。
「つーかまーえたっ!」
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!! ダレカダズゲデェェェェェ!!」
「いっただきまーす!」
「ヤベデェェェゲェオイジグナイヨォォォォ!!」
遊んでいる内に本気になっちゃったのかな、ゲルゲちゃんは泣き顔もとっても可愛い! 込み上げる笑顔をそのままに、捕まえたゲルゲちゃんのもるもる動く背中へ向けて、遠慮無く顔面を押しつけた。
「ッゲェェェェェェ!!」
埃の匂いと草の匂いの入り交じったゲルゲちゃんの体臭…あぁぁ実に最高…! ふがふがと匂いを堪能していると、ふいにぼたぼたと水音。なんだと思えば、堪能していたゲルゲちゃんがしくしく泣きながらおもらしをしてしまっていた…あらら残念、これじゃもう吸えないな…。(※11)
がっかりしながらもおもらしをしたゲルゲちゃんを地面に降ろし、こわごわと様子を伺っていた残りのゲルゲちゃんたちにゆらりと手を伸ばす。ね、もうちょっとだけだから…ねっ♡
「アアアアアアアア!!」
「ダスゲデェェェ!!」
散り散りにもるっていくゲルゲちゃん。でも残念ね、私には最強の必殺技があるの! ゲルゲちゃんのぷりぷり逃げていく尻尾の先に指を滑らせて、くにりと優しく摘まむ。
「ッゲ、ゲェェェェン!♡」
摘ままれたゲルゲちゃんは、ビクンビクンと身体を震わせて動きを止めた。ふふふ、これが私の必殺技…名付けて「ゲルゲちゃんの性感ツボ押し」…!!(※12)
ゲルゲちゃんが気持ちいい思いできるし、動きを止めたゲルゲちゃんを存分にくんかくんかできる。win-winの素晴らしい技…のはずなのだが。
「あらら…おもらししちゃったかぁ…」
残念ながら刺激が強すぎて漏らしてしまうゲルゲちゃんが多いのが難点だ。がっかりしながらおもらしゲルゲちゃんをまた地面に横たえ、次のゲルゲちゃんを狙う。逃げている内に漏らしている子もいるので、うまく避けてアタリの子を捕まえなくちゃ!
「うふふ、つかまえちゃうぞぉぉ~♡」
「ヤダァァァァ!!」
……。
思う存分ゲルゲちゃんをくんかくんかした頃には、周囲は漏らしながら逃げて涙目のゲルゲちゃんや、ツボ押しで漏らしてビクンビクンと身体を横たえたゲルゲちゃんで惨憺たる有様だった……てへへ、やりすぎちゃったかな★
空も暗くなり始めたし、そろそろ私も帰らなくちゃ。
「ってことで、またね、ゲルゲちゃんたち♡」
「アッ…♡ アッ…♡」
「ゲェェ、ペニペニイヤァ…アァァ♡」
あらやだ、ツボ押しで火が付いちゃったかな♡ おせっせを始めたゲルゲちゃんがいる。こんなところで、しかもまだ明るいのに…ゲルゲちゃんってば大胆ね♡
終わった後に恥ずかしがらせても可哀想だし、私はお暇しよう。次に来たときにもベビゲちゃんが増えてるかもしれないね。とっても楽しみ!


上機嫌で草むらを出れば、今いた群れとは別の群れの子だろうか、ゲルゲちゃんが一匹砂場でうんうんをしているところだった。健康的な色とサイズ。今日も元気で良かったね!
微笑ましい気分でそのまま帰宅したかったが、私の上機嫌はそこで断ち切られる事となった。突然現れた、ペアルックに身を包んだ男性カップルという痛々しい存在が、気持ちよさそうに排泄をしているゲルゲちゃんを、事もあろうに火バサミで掴んで持ち上げたのだ…なんてこと、虐民だわ!!(※13)
「ほい確保。これで全部かな?」
「うん、巣も潰したし…」
「ゲェェ!? ナンナノ!? ゲゥウンウンシデルノニィ!」
「ったく砂場汚しやがってよー、消毒依頼上げなきゃじゃねぇか」
「まぁまぁ、どうせ完全駆除しなきゃ子供も遊べないし…」
「ハナヂデェェェ!!」
もるもると身を捩るゲルゲちゃん。なんて可哀想…いま助けてあげる!!
「お、お待ちなさい、そこの虐民!! その子を離して!!」
「えっ」
「その子って…このゲのこと?」
「ゲなんて呼ばないで! その子はゲルゲちゃんです!」
「いや、でも俺たちコレが仕事なんで…」
「仕事!? 男同士でペアルック着て、ゲルゲちゃんをいじめるデートをするような仕事あるわけないでしょう!?」
「えっ? …えっ???」
「あ、うん、いや確かにそんな仕事はねぇな。てか制服だしなこれ」
「そ、そうそう。俺たち害虫駆除が仕事なんですよ」
「害虫なんて言わないで!! ゲルゲちゃんを離してあげて!!」
「え、えぇ~…」
男二人は顔を見合わせた後、うちの一人が小走りで離脱していった。(※14)逃げられたかとは気になったが、それよりゲルゲちゃんだ。ゲルゲちゃんは可哀想に、火バサミで挟まれたまま、涙とうんうんをぽたぽたと零している。
「何してるの、早く離して!」
「今書類持ってくるんでちょっと待ってて貰えますか?」
「書類?」
「このゲルゲがあなたの飼いゲであるとの証明書ですよ」
「これがあなたのゲなら解放します。違うなら駆除します。…そういうこったよお嬢さん」
戻ってきた男の一人は、ノートパソコンと書類を抱えていた。火バサミで挾まれたままのゲルゲちゃんの写真を撮りつつ、ペンと書類を私に手渡してくる。ええ、ええ、いいわよ。ゲルゲちゃんの命を助けてあげられるくらいならこんな書類何枚だって書いてやるわよ!(※15)
「照会かけるから、でたらめな住所や電話番号書いちゃダメだよー?」
「そんなことしません!!」
失礼な男! 憤慨しながら書類を書き終え、朱肉に親指を押し当てて拇印を押す。記入済みの書類を受け取った男は、いくつかノートパソコンのキーボードを叩いた後に、火バサミを開いてゲルゲちゃんを解放する。
「あぁ、よかったゲルゲちゃん…!」
「ア゙ァー、ゲゥカイゲニ゙ナレル゙ノォ? ヨロシグネェ、ゴシュジンサマー♡」
感動の再会…といきたいところだが、ゲルゲちゃんの下半身はうんうんで汚れているため抱擁は叶わない。パソコンの画面を見て何事か行っていた男達は顔を見合わせて何事かを囁き合った後に、挨拶もせずにそそくさと立ち去って行ってしまった。(※16)…全く、なんて失礼な人たちだったのかしら!
へらへらと笑うゲルゲちゃんを何度か撫でて、私は立ち上がった。ゲルゲちゃんが助かって本当に良かった。私も帰らなきゃ!
「じゃあね、ゲルゲちゃん! またね!」
「ゲ…♡ ナ゙ンデ、ドヂデオイデグノ゙ゴシュジンサマァァ!? ゲゥモ゙ヅレデッデヨォォ!!」
「もう虐民なんかに捕まっちゃだめよぉ~!!」(※17)


帰り道に偶然青ゲルゲの親子を見かけたので、その中でも大きめの一匹を選んで捕まえた。公園のゲルゲちゃんのパァパ候補だ。涙目でキョロキョロしていてとても可愛い。(※18)
「君にはお嫁さんを紹介してあげるね! とても素敵なゲルゲちゃんだよぉ」
「しぇらび…? びびぃ、まぁむ…」
今はまだ子供気分でお母さんが恋しいみたいだけど、お嫁さんを貰えば責任感とかが出てくるはず! 人間もゲルゲも一緒よね!
公園に戻ろうとすると、先ほどペアルックのホモな虐民から助け出したゲルゲちゃんがうろうろしていたので、見つからないようにこっそりと裏から群れのいる草むらに回り込んだ。昼にゲルゲちゃんたちへごはんをあげた辺りに青ゲルゲちゃんを降ろす。ここをまっすぐ行くとお嫁さんが待ってるよ。そう告げて、今度こそ私は帰路を急ぐのだった。(※19)


「ただいまぁ~」
「笞威子!? あんたまたどこ行ってたの!」
「えっ、お仕事だよ~」
「野良のゲルゲに餌をやってるんでしょう!? 保健所からまた電話来たわよ!!」(※20)
「地域に貢献してるじゃない! 立派な仕事だわ!」
「こら笞威子、話はまだ……笞威子!!」
煩い母親の隙を突いて自室に逃げ込む。やれゲルゲちゃんにごはんを持って行くのをやめろだの、家に金を入れないのならせめて米の一つも炊いておけだの、母親は本当に煩い。(※21)
「さて、と…」
ゲルゲちゃんをたっぷりくんかくんかしたので、今の私はまさにフルパワー充電状態だ。パソコンを立ち上げて描画アプリを起動し、ペンタブレットを駆使して今日見てきたゲルゲちゃんの様々な表情を書き残していく。
笑った顔、幸せそうな顔、気持ちよさそうな顔、泣いている顔。表情だけではなく、もるもると蠢く姿やご飯を食べたり逃げ惑ったりする姿も、記憶が薄れないうちにとしっかり書き込んでいく。
これを纏めて発表すれば、日本全国のゲルゲちゃんを愛するたちがこぞって賞賛してくれるのだ。絵をグッズにすれば買っていってくれる人もいるので、少ない小遣いに上乗せしてゲルゲちゃんのご飯代に充てることができる。ほらね、私はゲルゲちゃんにごはんをあげることによって、お金になるお仕事ができるのよ! (※22)
目と腕が疲れるまで絵を描いたら、就寝時間だ。親が家にいる間は、できるだけ横になって眠ることにしている。寝静まった頃に起き出して、下準備しておいたゲルゲちゃん用のごはんを煮込み、親が出勤前で起き出した時間は入浴などをして目を合わせない。完璧な生活だ。
「明日はどんなゲルゲちゃんのお顔が見れるかなぁ~!」
机の上にいつの間にか置かれていた「赤塚保健所」と記された封筒を破り捨てつつ、私はまた明日堪能できるであろうゲルゲちゃんの様々な表情や匂いに胸を躍らせるのだった。(※23)


【脚注】
※1  豆腐・肉類は便秘になりやすい食材です
※2  柿、番茶に含まれるタンニンは便秘になりやすい食材です
※3  見知らぬ人間の襲来に怯えています
※4  見分けが付いていないようですが、この群れとは初対面です
※5  ゲは馬鹿なのであっさりと餌に釣られます
※6  害虫に餌を与えてはいけません
※7  今の餌で便秘になり、刺激排泄を行いましたが出ないようです
※8  先ほどの食事のせいで群れが丸ごと便秘になりました
※9  必死に逃げているだけです
※10 本気です
※11 ゲルゲちゃんは好きですが、それはそれ、これはこれです
※12 快感中枢を刺激し、強制的に発情状態にさせます
※13 駆除業者です
※14 ゲが野良でない事を証明するための「飼育承諾申請書」を取りに行きました
※15 既に数枚ほど同じ書類を書いているようです
※16 飼育登録ゲの総数を見て「相当の厄介さん」と判断して逃げました
※17 群れに戻ればいいと思っていたようですが単機の野良ゲでした
※18 離乳したばかりの幼体なので番になれるわけありません
※19 当然チビ青はシングルマザー紫に邪険にされ、天涯孤独で彷徨うことになりました
※20 以前に書いた飼育承諾書により、飼い主に出頭命令や賠償金の支払い督促が届いているようです
※21 ゲに餌を施すのを「仕事」と言い張っていますが、むしろ餌代や賠償金の請求で大きなマイナスです
※22 「惨めなゲの表情が堪らない」と虐民にも大人気です
※23 保健所からの出頭命令通達文書です。中には「迷惑行為を行っていたゲを回収したら、あなたが飼いゲとして登録していました。期日までに迎えに来て損害賠償金を払えば返しますが、来ない場合はゲは処分。賠償金は後日裁判所から支払い命令と納付書が発送されます」と記載されていました
     
 
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