Notes

一人帰路につくごぉとおの前に、不意に人影が現れる。
「ごぉちゃん、ようやく見つけたよ」

急の呼びかけにビクッとするが、電灯に照らされた顔は以前に握手会に来てくれたファンだということがわかり、少し安心する。
「お姉さん、あの時握手会に来てくれたお姉さんだよね？」

(…ぐっ、なんで、なんで一度しか行けてないのにそんな、覚えてくれてるの？
そうやってどこまでも私の気持ちをめちゃくちゃにして……)

「お姉さん、ごぉのこと見つけてくれるのは嬉しいけど、今はオフだし特定のファンを贔屓するってのも違うって思うから、ごめんね。またイベントの時に来てくれると嬉しいな。もしくはツイ
「やめてっ、それ以上優しい言葉をかけないでっっ！」

突然大声を出す女性に、ただならぬ気配を感じビクッと驚く。

「ごぉちゃん、私ね、ごぉちゃんにキレイって褒められてすっごく嬉しかったよ。ごぉちゃんにとってはただのファンサービスのひとつだったかもしれないけど、それでもその一言が嬉しくてうれしくてうれしくて…だからもっとキレイになろうって頑張ったんだよ。
そしたらね、男の人が声をかけてくるの、そんなのどうでもいいのに、私はごぉちゃんからきれいって言われたいだけなのに、そこに男はいらないのに……
ごぉちゃんが、ごぉちゃんが優しすぎるのがいけないんだよ。そのせいで私はきれいになろうとしたの、そのせいで私襲われかけたの…」

女性は言葉を言い終わると泣き出してうずくまってしまった。
言っていることは支離滅裂だが、少なくともこのままこの女性を放ってはおけないと感じたごぉとおは、ハンカチを渡しながら優しく声をかけた。

「うん、そっか。辛かったんだね。怖かったんだね。ひとまず座れるところ行こっか。ほら」

近くの公園へと手を引き女性をベンチに座らせて自身も隣に座る。

「馬鹿だよね、私。推しに対してこんな当たり散らしちゃって……ごぉちゃんは何にも悪くないのにね。こんなんじゃファン失格だね、ふふっ、ははは…」

「ごぉのこと好きでいてくれたんだよね？だからきれいであろうとしてくれたんだよね。大丈夫だよ、ごぉはごぉ民のみんなが好きだから、大丈夫だよ。」

そういって女性をそっと抱きしめて背中を優しくたたいてあげる、まるで母が娘をあやすかのようなその姿に、女性は大声で泣き、ごぉとおのパーカーに顔をうずめた。
暫らくたって、ようやく落ち着いた女性は、自身の犯した事の重大さを理解しだし、バッと顔を離した後に大慌てで謝罪を繰り返しその場を後にした。

「帰りが遅くなっちゃった、流石にあの子も寝ちゃってるかな？」

独り言を呟きながら、すっかり濡れてしまったハンカチをしまい、また帰路についた。

「う～ん、流石に週１ペースでこういうファンに会うってことはそれだけ入れ込んでくれてると喜ぶべきなのかなぁ…少し複雑かな～」
「それだけ、ごぉのことをかわいいって好きって思ってくれてるってことだよね…うん、そういうことだと思おう、ごぉは罪な女だなー」